つくり方大公開!

上級編

タワーの鉄骨を積み上げる

未知の高さに吊り上げる(1)「特別仕様タワークレーン」

タワー塔体の鉄骨組立に絶対欠かせないのがクレーン。機械技術の進歩からコンパクトでパワフルなクレーンが生まれ、それをベースにカスタマイズすることで、作業に1番適したクレーンをオーダーメイドして効率を高めます。クレーンはまさにタワー建設の命です。

1 公開!これが特別仕様のクレーン

クレーンの名称: JCC-V720AH

2 どれだけの吊能力を、何基、どのように置くのかが決め手

自分で組上げた塔体に自らよじ登るフロアークライミングで、常に最上部に位置するクレーン。クレーンは真っ直ぐにしか登ることができないので、高くなるにしたがって細くなるタワー塔体では、中心部を貫き太さが最後まで変わらないエレベーターシャフトのすぐ外側にしか、クレーンを配置することができません。

1. 吊能力: 1回に30t以上を吊り上げる能力 → 720tm(※1)級以上のクレーン

断面が大きく重量の大きい塔体鉄骨は、道路運搬の規制上、1ピース約30t程度で搬入されるため、これをそのまま吊り上げる能力が必要です。
※1ジブの作業半径×荷重。32tを吊る場合は22.5mの作業半径となる。

2. 何基: 出来るだけ多く → 3基

高さが高くなると揚重に時間がかかります(吊荷30tの場合の巻き上げ速度は約30m/分で、300m以上吊上げるには、10分以上の時間が必要)。揚重回数がそのまま、塔体組立ての効率となるため、最低でも3基設置が必要です。

2. どこに: 狭い場所でもクレーン同士がぶつからない → コンパクトな新型クレーン (JCC-V720)

3基設置の場合、クレーン同士の間隔を最大としても、旋回芯間隔で約20mの距離しかとれません。旧来型のクレーンでは、後部旋回半径が12m弱あり、20mの間隔では、クレーンが回転したときに後部同士が衝突してしまいます。一方、新型クレーン(JCC-V720)は後部旋回半径が8.1mなので、クレーンとクレーンの間にクリアランスがあり配置が可能です。

3 今までのクレーンでは作業ヤードに届かない

第一展望台(375m)まで → 高揚程にチューンアップ

今まで日本には300mを超えるビルは存在しなかったため、現行の仕様の機種では、300m分を吊り上げるワイヤーしか装備していませんでした。

巻上ワイヤーの巻上装置、ドラムを特殊仕様とし、420mの揚程にチューンアップ。375mの第1展望台までの建て方に対応できるようにしました。

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第一展望台まで・・・

第一展望台から上部(375m以上) → クレーン中継作戦

①一台のクレーンで長い距離を吊り上げるのは時間がかかり非効率
②第一展望台より上部は、塔体が更にすぼまり、クレーンを載せるスペースがない

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第一展望台から上部

  • 荷上げ専用機と建て方専用機のペアで中継作戦
  • クレーンを一基追加しペアを2セット
  • 全てのクレーンを張出した展望台の上に組み直す
  • 建て方専用機はマストクライミング方式
  • 作業ヤードは第一展望台屋上

第一展望台上ヤードにて鉄骨を中継

4 未知の高さに備える安全対策

暴風や地震など、未知の環境でのクレーンの安全対策を検討し、11項目の特別仕様を搭載しています。

地震・暴風への対応 → マストの強度を25%アップ

労働安全衛生法に基づくクレーン構造規格により、クレーンの暴風や地震に対する強度が定められています。しかし、最上部に搭載したクレーンは、法で定められた以上の力がかかることが考えられます。そこで解析により検証を行いました。

●地震応答解析 ※2(シミュレーション)
タワー塔体とクレーンをモデル化した連成解析モデルに地震動波形を入力して検討

●風洞実験
クレーンの様々な姿勢に、様々な風向きを組み合わせてクレーンに作用する力を把握しました。

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★結果、マストの強度を25%アップすることとしました。

その他安全対策

上記の他にも、落雷時の精密機器のバックアップシステム、巻上げワイヤー電磁ブレーキ故障に対する二重バックアップブレーキシステムなどの安全対策を実施しています。